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​ワカ チンナ カタ​

​ある小話(テルグ語)

​獲物の持ち主

 ヒマラヤの渓谷で苦行者として暮らしていた間、アルジュナはシヴァ神への瞑想に没頭していました。すると突然、巨大なイノシシが目の前を駆け抜けました。どうやらイノシシは追い詰められている様子で、どう猛にフゥーとうなり声を上げ、ひどく怒って鼻を鳴らしていました。

 アルジュナは苦行の最中であり、どんな殺生もするべきではなかったのですが、大急ぎで弓を手に取ると、その怪物めがけて矢を放ちました。ちょうどその時、森に住むビール族〔インド中西部の山岳地帯に住む部族〕のある男が、同じように弓矢を手にしてその場に現れ、あのイノシシは自分の獲物であると主張しました。

 「お前はいったい何者だ、この侵入者め、よくもわしの獲物を撃ち殺したな」

 

と男はふてぶてしい態度で頭ごなしに怒鳴りました。アルジュナは森に住む部族の男にひどく侮辱されたと感じました。

 「森とそこに住む野生の生き物は皆のものだ」

 

とアルジュナは主張しました。

 

 「お前はなぜわしが追いかけていたイノシシを殺した?」

 

と男は問い詰めました。言い争いはすぐに矢の争いに変わりました。しかし、アルジュナは自分の矢が刺さらず、まるで草の葉のように落ちてしまうことに気が付きました。彼は無力なまま立ちすくみ、怒り心頭に発しました。アルジュナは弓で男の頭にすさまじい一撃を加えましたが、壊れたのは弓の方でした。アルジュナは拳(こぶし)で男に殴りかかりました。二人は互いにハンマーのように強烈な殴打を浴びせ合いながら長い間戦いましたが、地面にばったり倒れたのはアルジュナの方でした。ビール族の男は少しも疲れていませんでしたが、一方のアルジュナは息も絶え絶えになり、血を流していました。  

 その時、アルジュナはビール族の男が普通の人間ではないことを悟りました。アルジュナは、自分が崇拝しているシヴァ神のリンガ〔シヴァ神の象徴として崇拝される長円形の石〕を作り、その上にいくつかの花を捧げました。すると、ビール族の男といつのまにか現れた彼の妻の頭上に、その花々が載っているではありませんか。アルジュナは喜びでいっぱいになりました。というのも、今ようやくわかったからです。部族の男とその妻は、シヴァ神と神妃パルヴァティーであり、二神はアルジュナの不屈の精神を試し、彼を祝福するために現れたのでした。

 

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